「現場を知ること」から、私たちの料理は始まる。
はじめに
narrative operationには、FIELD TRIP制度という福利厚生があります。
スタッフの顧客体験や視察を支援する制度で、宿泊・飲食・観光・建築・地域文化など、さまざまな現場を実際に訪問するための費用を、会社が一部または全部補助するというもの。業務に活きる知見や感性、専門性を、”本物に触れること”を通じて育てていく。そんな想いで設けている制度です。
今回は、今年に入りVILLA COMMUNICOのメンバーが訪れた3つのFIELD TRIPを、ご紹介します。
VILLA COMMUNICO(ヴィラ コムニコ)は、奈良市の若草山麓にある、5室限定のガストロノミー・オーベルジュです。2018年創業のcommunicoが2024年夏に移転・再出発したレストランで、堀田大樹シェフが手掛ける、生産者から直接届く旬の食材を堪能できる宿泊施設です。
訪れた先は、奈良の酒蔵、信楽の陶工房、そして岡山の牧場。一流の料理をつくる者として、どうしても直接この目で見たい、この手で触れたい土地ばかりでした。
01. 奈良・三輪 ― 今西酒造へ

奈良・三輪へ、酒蔵見学に伺いました。
訪ねたのは、銘酒「みむろ杉」を醸す今西酒造さん。
お話を伺っていて強く感じたのは、酒というものが決して偶然の産物ではないということでした。造り手の意志決定の積み重ねによって、一本の酒は生まれていく。
何を選び、何を選ばないか。 何を引き出し、何を残すのか。
その揺るぎない方向性、一つひとつの判断が、味わいに澄んだ輪郭と、静かな緊張感を形づくっているのだと感じました。
造り手の姿勢は、酒質にそのまま表れる。
当たり前のことのようで、実際に現場に立ってみると、その意味の重みが違って見えてきます。奈良を代表する日本酒を、これからお客様にお出しする一本一本、大切に対峙していこう。そう、身が引き締まる体験をさせていただきました。
02. 信楽 ― 大谷製陶所へ
信楽の大谷製陶所さんへ、新しい器の制作をお願いに伺いました。
大谷さんは、2018年の東生駒での独立からずっとお世話になっている作家さんの一人です。
自分の料理を盛り付ける際に、真っ先に手に取るのは大谷さんの器かもしれません。それくらい、自分の料理の表現には欠かせない、キャンバスのようなお皿たち。
今回は、初めてお願いするデザインの器もあり、「どんな料理を盛り付けようか」と、納品が待ち遠しい気持ちで工房を後にしました。
器のこと以外にも、これからの自身の料理人としての在り方を考えさせられるお話をたくさん聞かせていただき、とても貴重な時間でした。つくる現場を訪ねることは、単に発注をすることとは違う。作家さんの手の動き、工房の空気、そこにある言葉が、自分の料理にもゆっくりと染み込んでいくような気がしています。
大谷さん、いつも本当にありがとうございます。
03. 岡山― 吉田牧場へ

少し足をのばして、チーズ担当スタッフの研修も兼ねて、吉田牧場さんの製造風景を見学に行かせていただきました。
現場に立って印象的だったのは、「どの工程で人が積極的に介入し、どこを微生物や時間の働きに委ねるのか」という判断の繊細さでした。
温度管理、カードの状態、そして引き延ばしの力加減。その瞬間の乳のコンディションを見極める感覚が、最終的なテクスチャーや熟成の方向性を決定づけているよう。味わいの骨格や質感の輪郭は、そうした判断の積み重ねによって形成されるものだと感じました。
牛乳がチーズへと変化していくプロセスは、単なる加工ではなく、つくり手の感覚と経験が反映される、発酵・熟成の設計そのものなのだと思います。
これから時間、環境、そして人の手によって、”仕上がっていく途中”にあるチーズ。
その生成過程と熟成の背景を理解したうえで、どの段階の状態をどの料理に合わせ、どのワインと向き合わせるのが最適かを考えること。現場を知ることは、素材への解像度を高め、レストランとしての表現の精度を上げるうえで、最も重要な学びのひとつだと、改めて実感した一日でした。
おわりに ― FIELD TRIPが、私たちの料理と接客を深くしていく
三つの現場を振り返ってみて、共通していたのは、「つくり手の判断の積み重ねが、最終的な質をつくる」ということでした。
酒も、器も、チーズも。 どれも一朝一夕では生まれない。無数の小さな選択と、現場での感覚と、時間への信頼。その総和として、私たちのもとに届きます。
VILLA COMMUNICOで提供する一皿の向こう側には、必ず誰かの物語がある。FIELD TRIPは、その物語を私たち自身の肌で感じ、お客様にまたそっとお伝えするための、大切な時間だと思っています。
narrative operationでは、こうした現場を体験する機会を、これからも大切にしていきたいと考えています。
私たちと一緒に、日本各地の”つくり手”を訪ね、その物語を料理や宿に翻訳していく仲間を募集中です。興味を持ってくださった方は、ぜひ採用サイトを覗いてみてください。
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